スキンロンジェビティという言葉が、ここ数年で急速に広まりました。肌を長く健康に保つ科学——肌の長寿科学とも訳せる考え方です。資生堂も、L'Oréalも、エスティローダーも、今この言葉を使っています。
良い傾向だと思います。「老化を隠す」から「老化を理解して対処する」への転換は、業界として正しい方向に向かっている。
ただ、私には一つ、物足りないことがあります。
「何が肌を老化させているか」の問いを、まだ誰も本気で突き詰めていないように見えるんです。
老化は「現象」ではなく「動力学」です
皮膚老化動力学という言葉を私は使います。老化を静止した現象として見るのではなく、複数の経路が連鎖しながら進む「動く過程」として捉える、という意味です。
具体的に言うと、こうです。紫外線やストレスが活性酸素(ROS)を発生させます。ROSは慢性炎症を引き起こします。炎症はMMP(コラーゲン分解酵素)を活性化させます。コラーゲンが壊れ、ハリが失われます。並行して、過剰な糖質がAGEs(終末糖化産物)を形成し、コラーゲンをさらに劣化させます。バリア機能が崩れ、外部刺激が直接入り込み、炎症を加速させます。
ROS → 炎症 → MMP → コラーゲン破壊 → AGEs蓄積。これが皮膚老化動力学の連鎖です。途中の現象だけを見ていても、上流は止まらない。
この連鎖には、速度があります。相互の増幅があります。先に進んでいる経路があれば、遅れている経路もある。人によってパターンが違います。同じスキンロンジェビティ対策をしても、同じ効果が出ないのは、老化動力学のパターンが個人ごとに異なるからです。
スキンロンジェビティの「次」にあるもの
肌の長寿科学(スキンロンジェビティ)が「健康な肌状態を長く維持する」という予防の思想なら、私が取り組んでいるのはその前段です。
まず、今の肌でどの老化経路がどれだけ進んでいるかを知る。そこから介入経路を決める。単一成分・単一経路ではなく、5つの経路に同時に対処する。
REGINAのFABIRフレームワークは、この思想から作られています。F(線維芽細胞活性)、A(抗糖化)、B(バリア機能)、I(抗炎症)、R(抗酸化)の5軸。肌の長寿科学を実現するには、この5つの経路を同時に考える必要があると、私は考えています。
なぜ大手は「一成分」で訴求するのか
これは批判ではなく、構造の問題です。
大手は広告予算を一点集中させることで、認知を取ります。「このブランドといえばこの成分」という刷り込みを作るのが、マーケティングとして正しい。でも、老化動力学の観点からは、それは半分しか答えていないことになります。
ROSを抑えるだけでは、炎症は止まらない。炎症を抑えるだけでは、糖化は進む。バリアを整えるだけでは、上流のカスケードは続く。肌の長寿科学を本当に実現するには、複数経路への同時対処が不可欠なんです。
私が広告費ゼロで原料費に全振りしているのは、哲学の話ではなく、設計上の必然です。5経路に同時に効く処方を作ろうとすると、原料費が先に上がる。
CHROSNOFが計算していること
CHROSNOF(クロスノフ)は、この皮膚老化動力学を数理モデルとして記述したものです。ODE(常微分方程式)とPDE(偏微分方程式)、そしてPINNs(物理情報ニューラルネットワーク)を使って、5つの経路の状態を定量的に算出します。
感覚ではなく、計算で状態を見る。それが出発点でした。
肌の長寿科学は、今後さらに重要になっていく領域です。でも「長く健康を保つ」という目標を達成するには、まず今起きていることを正確に知る必要がある。皮膚老化動力学は、そのための言語です。
REGINA LOCUS LVXLは、この言語を使って製品を設計しています。

